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 日本の社会保障は各国と比べて負担が「中程度」、受けられるサービスも「中程度」と言われてきた。それでも世界一の長寿国となったが、今後も維持できるかどうか、瀬戸際にある。

 陽光が窓から入りこむ、空っぽの部屋。天井のカーテンレールや、壁面に付いた酸素など医療用ガスの供給口は、ここが入院のために使われていたことを物語る。

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もともと病室だった空っぽの部屋。宮崎生協病院は2023年夏、5階の1フロアをまるごと「休床」することになった=宮崎市

 「2人部屋の病室だったんです」と、宮崎生協病院看護師らを統括する小牟田佐知子さんがつぶやいた。

 この病院は、宮崎市のJR宮崎駅から北に約3キロの位置にある。3~5階に計124床の入院ベッドがあり、多くの救急搬送を受け入れ新型コロナ患者の入院医療にも対応するなど、地域の医療を支えてきた。ところが2023年夏、5階の33床分が使えなくなった。

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JR宮崎駅から北に3キロほどの宮崎生協病院。看護師不足などのため、2023年夏に5階の1フロアまるごと休床することになった=宮崎市

 大きな原因は、看護師不足だ。

 病院を運営する宮崎医療生活協同組合では、市内に三つの診療所と一つの訪問看護ステーションも運営している。全体で看護師が150人ほど働くが、21年度以降、毎年20人前後が退職。23年度は約30人が辞め、離職率は20%になった。

 毎年、中途で10~15人ほどの看護師を採用してきたが、近年は募集してもなかなか集まらない。

 一因は賃金だ。さまざまな業…

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